株式会社エオネックス社長エッセイ「顧客主義」で、風を読む

「顧客主義」で、風を読む

最終更新日:2011年8月19日 金

2011年度 エオネックスグループのコンセプト

「顧客主義」で、風を読む

 1.我々をとりまく現状

 2008年9月のリーマンショック以来大きな打撃を受けた我々グループも、経営計画の見直しや新たなビジネスモデルを創造することにより、着実な回復と確実な成果を創出してきました。しかし、今年の3月11日の東日本大震災の発生により社会環境は一変し、新たなリスクに対しての対策が必要となってきています。

 特に震災地以外での公共事業の減少やそれに伴う経済不況は深刻で、今後その影響はますます大きくなり、競争激化に伴う受注単価の減少で倒産や廃業といったリスクが大きくなっていくことは間違いありません。

 しかしまた一方で、新たな市場が出現したり、官から民へといった流れが新たなビジネスチャンスを生み出す可能性も多くなってきました。企業体を再構築することによって、新たなビジネスモデルを生み出して行くことができれば、逆に大きなチャンスの時代が到来したと考えても過言ではありません。

2.さらなる変革が必要な時代

 我々企業を取り巻く環境は社会環境、市場、消費者、商品、流通、コミュニケーション、競合他社といった様々なものがあり、それによって「企業風土」といったものが形成されています。「風土」の「風」は変化していかなければならないものを表し、戦略・戦術、社内環境やビジネスモデルにあたります。また「風土」の「土」は変えてはいけないものを表し、創業の想いや社訓・社是、経営理念といったものにあたります。まさに今こそ、変わらなくてはならないものと変えてはいけないものを明確にして、新たな「企業風土」を再構築しなけれはならない時期であると考えます。

3.「風」を読んで新たなビジネスモデルに挑戦

 我々エオネックスグループも風を読んで様々に変化してきました。私が4年間お世話になった国際航業を退社し、エオネックスの前身である北陸地下開発に入社したのは昭和60年で、当時北陸地下開発は温泉・井戸掘削と地滑り調査・工事のみの会社でした。お客様のニーズや当時の社員さんの努力により、温泉分野は温泉調査、温泉設備工事、温泉メンテナ ンスと広がっていき、調査部門は、地質調査・砂防調査・環境調査と進化していきました。そして平成14年の土壌汚染対策法の施行を新たな風と読んで、当時の北陸地下開発と北陸分析センターを合併し、エオネックスが誕生したのです。以来、土壌汚染や省エネルギー分野へとさらなる変化を遂げています。また、利水社も昭和60年頃は流量観測のみの会社でした。これもまたお客様のニーズや社員さんのたゆまぬ努力により、地上測量や地下水調査各種計測調査等に進出し、今この新たなアスナルというスキームで空間情報に挑戦しています。

 このように我々エオネックスグループは今までも「風」を読んで様々な領域に挑戦してきました。今はさらに精神を集中させ「風」を読んで新たなビジネスモデルを創出しなければならない時期であるのです。

 

4.「顧客主義」で「風」を読む

 エオネックスグループの経営基本方針その1は、「お客様第一の精神に徹し、心が通い合う活きた組織をもって、お客様の満足のために努力する」であり、私の経営理念の根幹は徹底した「お客様第一、お客様満足」と言った「顧客主義」にあります。また、昨年からベストセラーとなった通称「もしドラ」で言われています「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」でさらに有名になったピーター・ドラッカーも企業の目的は「顧客の創造」と言っています。さらにドラッカーは「顧客の創造」に必要なことは二つであり、一つはマーケティング(顧客満足)ともう一つはイノベーション(技術革新)であるとしています。マーケティング(顧客満足)とは、顧客ニーズをつかみ市場を創り広げ、現在の利益を増やすことであり、イノベーション(技術革新)とは、事業に良い変化を起こすことと数値目標を設定し、改善ポイントを探して未来の利益を増やすことと言っています。いずれにしても経営のヒントは顧客のニーズ・ウォンツから生まれ、利益も顧客によってもたらされることを考えれば、徹底した「顧客主義」をコンセプトに加えるのは当然のことと考えられます。

 これらのことから、今年度のエオネックスグループのコンセプトは「『顧客主義』で風を読む」にさせて戴きました。

5.「風を読む」のポイント

 「風を読む」を達成するためのポイントを三つあげさせて戴きました。

 

①ヒントは顧客にあり、小さなチャンスも見逃さない

 顧客からの意見や要求が最大のヒントです。どんなに小さくて条件が悪い仕事でも極力 断ることなく顧客の立場を配慮して望めば、必ず次に大きなチャンスがやってきます。また、チャンスは日常の業務の中にあります。柳生家の家訓は、一.小才は縁に気づかず、二.中才は縁を生かせず、三.大才は袖擦れ合う縁をも生かす、であり、現代流に訳すると一.能力の無い人はそこにチャンスがあることにも気づかない、二.普通の能力の人は、そこにチャンスがあると解っているれど生かすすべを知らない、三.大変能力のある人は、ほんの小さなチャンスでも生かすことができると言う意味です。日頃から謙虚に感性を磨き、情報を多く有することがチャンス獲得に必要なことです。

②常にビジネスモデルを意識する

 ビジネスモデルとは、利益を生み出す商品やサービスに関する事業戦略と収益構造のことを言います。ビジネスモデルは常に変化し、消滅し、生まれてきます。一度ヒットしたビジネスモデルの寿命も永遠ではありません。常に時代の「風」を読み、新たな商品やサービスを創出して次の事業戦略と収益構造を考えていくことが大切です。

 また、ビジネスモデルを構築するにあたっては最初からマーケット(市場)を特定する必要はありません。我々を取り巻くマーケットがすべて対象となります。

 

③異業種交流のススメ

 「マーケットを特定する必要はない」と上述しましたが、特にアスナルグループ全体でみるとまだまだ公共事業への依存度が高く、マーケットを特定している傾向があります。このままでは公共事業がさらに減少すれば、忽ち危険水域に陥ってしまいます。官公庁や地元同業者とのつき合いだけではなく、積極的に異業種との交流を深め、情報量を拡大してビジネスチャンスを掴むように努力しましょう。

 

6.「顧客主義」のポイント

「顧客主義」を達成するためのポイントを五つあげさせて戴きました。

①顧客満足度のアップ

 会社経営を行っていく上で、最重要ポイントは「顧客満足度のアップ」です。今年度は特にこの点を重点課題として、基礎的なことも含めて実践していきたいと考えます。そこで、以 下のポイントに絞って実行していきます。

●報連相の徹底

●顧客分析による満足度調査の実施

●接遇研修の実施や接遇マニュアルの作成

●顧客ニーズ、顧客ウォンツの追求

●プレゼン能力のアップ

 

②組織のマルチタスク化

 本来「マルチタスク」とはコンピューター用語ですが、ここでは「一人何役」という意味で使用します。「私は技術だから」とか「私は営業だから」といった考え方はもう通用しない時代に入ってきています。顧客にしてみればエオネックスグループは一つなので、完全ではなくても「一人何役でもこなしていこう」といった気概が大切です。組織のマルチタスク化を促進して、営業も技術や事務職能力を養い、また技術も営業力や接遇能力を身につけて 生産性の向上、情報の共有化、コミュニケーションのアップを図っていきましょう。

 

③ストック商品に対する意識の強化

 ストックとは本来「蓄えや手持ち」の意味ですが、ここでは「毎年継続的に受注が可能で、利益率が高い商品」の意味で使用します。たとえばエオネックスグループでのストック商品は、観測業務、メンテナンス業務、分析業務、データベース作成業務、省エネ管理業務等があげられますが、利益率を上げ経営を安定させていくには、これらのストック商品の売上高に対する比率を上げていくことが必要となります。市場は競争激化が続いており、ストック商品の単独受注は望めないので、ビジネスモデルを作成し、提案物件の中にできるだけストック商品を含めて受注していくことが必要であると考えます。

④顧客情報のさらなる共有化

 アスナルというスキームを創った大きな目的として「情報量の拡大」があげられます。エオネックスグループ内での顧客の共有化はもちろんのことですが、アスナルコーポレーション内や国際航業グループとの情報の共有化も大きな魅力であり、受注拡大や技術力アップにつながると考えます。グループの運営にかかわる役員はもちろんのことですが、各人が積極的にアプローチしていくことも必要です。

 

⑤利益の追求

 利益は「将来的なコスト」であり、従って常に追求しなければならないものです。ただし、受注の意志決定をする際には、自社の利益のことだけを考えるのではなく、エオネックスグループとしての利益、アスナルグループとしての利益、国際航業グループとしての利益も考えなくてはなりません。そのことが将来的に自社の利益に繋がってくると考えます。

 

7.信頼とコミュニケーション

 平成20年10月9日にアスナルコーポレーションの設立記念式典とキックオフパーティが開催されたことは、まだ記憶に新しいと思います。その時私からアスナルコーポレーションの設立経緯とビジョンをお話させて戴いた時に最後にこんな話しをさせて戴いたと思います。「芥川龍之介の「蜘蛛の糸」というお話があります。カンダタという罪人が地獄の血の池からお釈迦様の降ろした蜘蛛の糸を伝って登ってくる際に自分の下から他の罪人が登ってくるのを見て、自分一人だけ助かろうと思った瞬間に糸が切れてまた血の池に落ちてしまったというお話です。私たちの協力・信頼関係もまだこの蜘蛛の糸と同じです。ぜひさらに太いものとなるようには信頼とコミュニケーションが必要不可欠です。ぜひこれから一緒に頑張りましょう。」と。

 あれからもうすぐ三年が経とうとしています。営業・技術交流や人事交流も進んでいますが、まだまだできることが沢山あると思います。沢山の同業者が疲弊している中で、このスキームで仕事ができることの幸せを実感しています。エオネックスグループとしてアスナルコーポレーションの一員として、助け合い、コミュニケーションを深めながら「『顧客主義』で風を読む」を実践していきましょう。