「感動こそが原動力」

最終更新日:2008年9月12日 金

(1)モラルを無くした日本
1.荒んだ時代
従来日本人はその民族性から、非常にモラルの高い穏やかな性格を有する民族と言われてきました。献身な仏教徒である国民性から「おかげさん」「有り難い」「弱きを助け、強気を挫く」などモラルの高さを表す諺や格言が多く残されています。
しかし現代社会はどうでしょう?新聞には毎日のように、親が子を虐待したり殺したり、または子が親を殺したりと陰惨な記事が載っています。テレビ等の報道でも思わず残虐すぎて他のチャンネルに変えてしまうほどの事件があとをたちません。全くここしばらくのうちに急激に日本人の誇り高きモラルは低下してしまったとしか考えられません。
また本来「聖職」と言われた職域の方々の不祥事も多くなってきました。一番生徒の一生に影響を及ぼすはずの学校の先生までが、自らの欲望のために生徒に対して猥褻な行為や虐待行為を行ったり、範となるはずが考えられない事件が日本各地で発覚しています。石川県のある学校でも食事の前に当たり前のように「戴きます」といって子供が感謝のために手を合わす行為を「特定の宗教行為」と言って禁止させたそうです。これでは子供達の心は荒むいっぽうで、とても誇り高きモラルを持って育つとは考えにくいです。

2.未完成の景気回復
日銀や経済産業省の発表では、大手企業の業績回復を受けて「景気回復」と言う言葉が目立つようになってきました。しかし本当に我々は「豊か」になっているのでしょうか?相変わらず国の財政は累積赤字が増加し続け、その額は地方自治体の額と合わせて1000兆円とも言われています。大手民間企業は空前の収益をあげている企業もいますが、その原因として国民の税金が投入されたり、大幅な人員カットによるものがあり、多くの犠牲のもとに成り立っているものとも考えられます。
本当に我々の現代社会が豊かになっているのであれば、前項で紹介したような荒んだ事件は起こらないはずであり、一部の大手企業の情報だけで判断されているような気がしてなりません。この国の景気回復はまだまだ未完成であり、物心ともに豊かになるには国民のモラルを向上させて、私心を捨て、他人を思いやる心を一人一人がさらに向上させることが大切であると思います。

3.我々を取り巻く状況
私がこのエオネックスグループにお世話になってはや20年になりました。当然経営環境も市場環境も20年前とは大きく変化しています。昭和60年頃は県の地滑り等の防災事業や温泉掘削工事等が売り上げの主力であり、販売地域も石川県だけでした。現在は、拠点も能登営業所以外に東京、大阪、東海と増え、販売地域もほぼ日本全国になりました。また、商品も温泉では調査、工事、設備、メンテナンスと一貫した体制がとれるようになり、その他環境や防災の商品構成も以前とは大きく変わっています。利水社においても流量観測主体の会社から測量、設計、特殊解析と変貌も遂げてきました。
いま建設業界では空前の不況に陥っています。公共事業の大幅削減による受注量の減少、デフレスパイラルの影響による受注単価の低下等により倒産する会社や、大幅に人員を削減している会社が増えてきています。我々の建設コンサルタント業界も例外ではなく、公共事業依存度が高い企業においては、苦戦を強いられいるのが現状です。そしてこの傾向は一時期だけのこととは言い切れず、中長期的に続くと予想されます。

(2)今求められる企業像
1.良い会社の条件
良い会社の条件とは何でしょうか?給料が高い。福利厚生が充実している。社会的な知名度が高い。コミュニケーションがうまくいっている。どれもあてはまると思いますが、他にもいろいろ考えられると思います。
十人十色と言いますが、社員さん一人一人が別々の理想や夢を持っています。初めから各人の自己実現の場と会社の目指すところがぴったりあてはまるような会社であれば申し分無い訳ですが、現実はなかなかあてはまりません。しかしながら、社員さんと会社がお互いに切磋琢磨しながら、そうなるように努力している会社が私は「良い会社」の条件の一つではないかと考えます。

2.会社のリストラ(再構築)の3ポイント
現在不況の影響を受け、リストラ実施している会社が多くあります。日本ではリストラという言葉は「従業員削減」の代名詞のように使われていますが、リストラはリストラクチャーの略語で本来は「再構築」という意味です。十数年前にお亡くなりになられた森信三先生は、会社の再構築は三つのことを実行すれば必ず達成されるとおっしゃいました。それは「①時を守る②礼をつくす③場を浄める」の3つです。言い換えれば、これができない会社は大成しないということです。すべては基本的なことですがとても大切なことであり、エオネックスグループでももう一度原点に還り、これを徹底していきたいと思います。

3.すべてで「感動」を共有できる会社
日本で一番リピーター率の高い施設「東京ディズニーランド」のコンセプトは「お客様に夢と感動を与える」です。その施設の素晴らしさもありますが、従業員のお客様に対する心からのおもてなしもとても感動を与えてくれます。
私の友人が以前話してくれた出来事です。友人が家族で東京ディズニーランドを訪れた時にキャラクターのパレードを見ていたら、隣りに小さな子供を抱きかかえた女性がいたそうです。その時に子供が持っていたオレンジジュースのカップを落としてしまいました。バシャーという音とともにあたりにオレンジジュースと氷がばらまかれました。思わず狼狽する母親。子供を抱きかかえながらどうしていいか解らずにオロオロするばかりです。友人が手伝おうとしたその時にどこからともなく数名のスタッフが現れ「大丈夫ですか」という言葉をかけたと思うと、あっという間に片づけて行ってしましました。そしてその内の一人が新しいオレンジジュースを持ってきて「どうぞ」といって子供に渡していきました。母親はいうに及ばす友人とその場にいた人々がとても感動したそうです。
ある小学校4年生の女の子が書いた作文の中にこんな文書があったそうです。「①良いことをすれば、人に好かれる。②良いことを進んでやれば、人にあてにされる。③良いことを続けてやれば、人から頼りにされる。」単純な文章のように見えますが、顧客満足の原点がここにあると思います。また、「感動」と言う言葉は国語辞典によると「魂が浄められたり、人間のあるべき姿を思い起こしたりするような感じを思わず身内に覚えること」とあります。もし「感動」が社員さん同士でいつも共有されている職場になったら、もし「感動」が会社とお客様とでいつも共有されている関係ができたら。「感動こそが原動力」原点に還り、このテーマを推進していきたいと考えます。

(3)グループビジョン
1.再構築三ヶ条の推進
前述したように、「感動こそが原動力」というコンセプトの企業づくりを達成するには、基本的なことができていなければなりません。今一度原点に還り、「①時を守る②礼をつくす③場を浄める」の再構築三ヶ条を推進していきます。

2.「感動こそが原動力」活動の実施
グループ経営方針に「1.お客様第一の精神に徹し、心が通い合う活きた組織をもって、お客様満足のために努力する。」と「4.和の心と友愛の精神で一致協力し、常に利他の心を忘れずにチームワークを持って仕事に邁進する。」があります。1のお客様の満足を達成することも4の和の心と友愛の精神で一致協力することもお互いの感動を共有化することがキーワードとなります。どうしたらお客様が喜んでくれるか、どうすれば社員さんが頼りにしてくれるか、ということを具体的なアクションプランとして実施していきましょう。

3.3K(健康、環境、管理)のビジネスモデルの確立
昨年から提唱しているエオネックスグループの3K(健康、環境、管理)において、さらなる研鑽を重ね、それぞれの部門においてのビジネスモデルを確立していきましょう。新たな新商品のヒントは現場とお客様の声にあたることを再度理解して、営業と技術が一致協力してこれにあたることが大切です。

4.アンテナショップの検討
エオネックスグループの商品である温泉事業は、「企画→調査→掘削工事→設備工事→メンテナンス」と一連の関係業務がすべてこなせる会社として確立してきました。これに新たに実際の運営という事業も検討してはどうかと考えます。我々のグループの叡智を結集した施設は、これから施設を検討されるお客様に対しても営業的にプラスになると考えます。

5.店頭公開への挑戦
店頭公開してお客様に当社の株を持っていただけることは、究極の顧客満足とも言えます。未知の世界ですが、ぜひ挑戦していきましょう。まずはプロジェクトチームを結成し、毎月の役員会での報告事項で進捗情報を発表していきたいと考えています。

(4)終わりに
「21世紀は心の時代」と言われて数年が経ちました。前述したことにも関連しますが、日本は物質的には大変恵まれていますが、精神的にはどんどん自己中心的になり、他人を思いやる利他の心がなくなってきました。その結果、人の心がどんどん荒み、弱い者虐めに象徴されますが、幼児や高齢者に対する虐待など、目を覆うような行為が多く目立つようになってきたのです。
私の尊敬する鍵山秀三郎さんがこう言っておられます。「仕事そのもので、人の心が荒むようなことはありません。荒みはほとんど、人と人との人間関係から生ずるものです。心を荒ませないためには、人に対して親切にすることです。そして、身の回りを綺麗にすることです。人を喜ばせることに心を研き、汚い所を綺麗にすれば、心が落ち着き、心の荒みは消えていくものです。」
私はエオネックスグループにお世話になって20年になりました。「良い会社」を目指して頑張ってきたつもりですが、社員の皆さんのおかげで20年前とは比べものにならないくらい、規模的にも技術力的にも発展してきました。しかしながら、本当の「良い会社」にする上で、私を含めて一人一人の心構えやモラルの向上心が今一つ足りないと考えています。
何度も言いますが、ここで今一度原点に戻り、基本的なことから出発することにより、本当の「良い会社」を目指したいと思います。そして我々が範となり、地域の方々やお客様から認められることができれば、その時こそ我々の目標は達成できるのです。